高野秀行『恋するソマリア』
図書館本。前作『謎の独立国家ソマリランド』が非常に面白く、のめり込むように読んだのでこちらも手に取ってみた。
遊牧民の執着心のなさというのは世界共通なのだろうか。本書に描かれるソマリ人の気質はモンゴル人のそれを想起させる。客人を大事にするところや、ぱっと海外に行ってしまうところなどはまさに同じだ。女性の強さや強かさも。
異なるのは、筆者もソマリ世界の魅力と語る氏族の存在だろう。モンゴル人も家族や家系を大事にするが、ソマリ世界における氏族はそれを超えた大きな枠組みであり、すべての行動の単位となっているものだ。政治や調停も氏族の長老達が集まって行う。氏族同士の抗争は少なくないようだが、それを終わらせるために、父を殺された男が敵の娘と結婚した話は感動的であった。
高野秀行の著作はいくつか読んでいるが、この人の状況への巻き込まれっぷり、流されっぷりにはいつも唖然とさせられる。散々辺境での経験を積んでいるのに、常にある種の能天気さがあり、だからこそ感動力の薄れることもなしにこのような旅が続けられるのかとも思う。このような人と結婚した筆者の奥さんは本当にすごいと毎回思うのである。
ツンデレではなくツンツンなソマリ世界への、筆者の壮大な片想いはまだまだ続くようだ。
追記
最後に府中刑務所に収監されたソマリ人への通訳を筆者が務めた話が載っていたが、私の知り合いのモンゴル研究者からも同様の体験談を聞いた。日本でレア言語が必要とされるのは、皮肉にもまさにこのような時である。
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