小長谷有紀『モンゴルの二十世紀』

お世話になったモンゴル研究者にいただいた本。「泣けますよ」と言われたが、本当に感動。そして、目から鱗。

著者は紫綬褒章も受勲されている、モンゴル研究の第一人者。この本は、1924年から1992年までの社会主義時代のモンゴルをリードした人々へのインタビュー集だ。

この本を読んで、現在のモンゴルの状況がものすごく腑に落ちた。なぜこんなに産業が貧弱なのか。農業や工業がうまくいっていないのか。モンゴルにもかつて、自給率が高かった時代があったのに。モンゴルの人々は、本来なんでも自分達で作れる人達。インタビューなので美化されているところもあるだろうが、近代国家モンゴル形成のために、それを活かそうと奔走した人々がいたのは確かなのだ。

モンゴルで住んでいた村に廃墟状態の元小麦工場があったが、なぜそれが廃止されたのか?そもそもなぜ建てられて、どのように稼働していたのか?毎日見ていたあの廃工場に人の気配が加わって、急に立体感を帯びて立ち上がってきたように感じた。

資本主義に移行して25年、良くも悪くもモンゴルの社会主義は長い尾を引いているのだと改めて思う。必ずしも健全にはいかなかった移行。この証言者達が作ったものを捨てて、資本主義の遊牧国家はどこへ向かっているのだろう。

モンゴルの社会主義についての小論も掲載されており、インタビューの背景も理解できるようになっている。モンゴルに行ったことのある人、モンゴル社会に興味のある人にはぜひ手に取っていただきたい一冊。

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